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2018 2/7 鉾岳大滝 初登「蒼い幻」

参加者 木下、山本

エリア 宮崎県 雌鉾岳

1月14日の鉾岳大滝試登以来、鉾岳大滝の氷瀑が脳裏に焼き付き、毎晩天気予報を見ては眠れぬ夜を過ごした。それと同時に氷瀑の大崩壊を思い返すと、果たして状態が良かったとしても、あの氷瀑に取り付いて良いものかと葛藤が有ったのも事実だ。

2月に入り今季最大と言われる大寒波が入った。そしてこの寒波以降は次第に暖かくなるという予想も耳にする。

木下さんと休みが合ったのは2月6日〜7日。ちょうど6日は寒波の底日。6日までに冷え切った氷を7日早朝から駆け登れれば、これ以上ない絶好のコンディションのはず...。

氷瀑の崩壊から再び氷が発達しているかはわからない。4日〜5日の寒気の緩みで再び崩壊している可能性もある。

しかしこれを逃せば二度とあの氷瀑と巡り会えないかもしれない!!!

とりあえず鉾岳大滝まで行ってみよう。ダメなら無理せず宇土内谷に転戦しよう。

やっと考えがまとまり鉾岳大滝へ向かう事を決めた。

2月6日

14時過ぎに福岡を出発。道中は前夜の大雪で九州道が止まり久留米まで下道を使い、なんとか鹿川キャンプ場までたどり着く。本来なら6日に氷結具合の確認もしておきたかったが、キャンプ場に着いたのは21:30頃そのまま駐車場で夜を明かす。

2月7日

4:00起床、5:00鹿川キャンプ場出発。

5:40〜5:50頃、雌鉾岳スラブの取り付き付近の渡渉点に到着。一旦荷物を降ろし、大滝の氷結具合を偵察に行く。

遠目で見ると不安だったが近くで見ると前回より氷の量が多い。前回は氷瀑の裏側をシャーシャー水が流れていたが、今回は気温も低く、日の出前だけあって表面にチョロチョロ水が流れている程度に見える。

イケる!っと木下さんが叫ぶ。

その言葉に私も身が引き締まる。

一旦荷物を取りに戻り、ギア装着。

6:50クライミング開始

1P目40m 木下リード

1P目は大滝の下部を登り傾斜が落ちたところでピッチを切る。滝の氷結の良い左側のラインを選んだ。気温は-10℃、まだ氷のコンディションは良い。

2P目25m 山本リード

2P目は傾斜が最も立っていて核心部分になる。前回氷瀑が崩壊した部分が丁度この2P目に当たる。崩壊が頭によぎり緊張する。脇には水がチョロチョロ流れていて嫌な気分。本当は一気に安定した場所まで登りたいと考えていたが、上部の氷結が悪そうでビレー点の構築に不安を覚え、早めにピッチを切った。段差のある場所で切ったがハンギング気味のビレー。

2P目終了点から足元を見下ろす。

3P目45m 木下リード

大滝最後のピッチ。最初は傾斜が強いが徐々に傾斜は緩む。途中エイリアン?があり乗り越えるムーブが必要だが、エイリアンが脆そうで怖い。

日が当たり始めて最高のロケーションとなる。抜けるような青空。輝く花崗岩。天まで昇るブルーアイス。クライミングをやってて良かったと思うひとときだ!!!

しかしリードしてる木下さんは氷に日が当たり、氷の融解が始まり水が滴り出す。正直それどころでは無かっただろう。

山本もセカンドの登りだしでビレー点の一番長いスクリュー(21cm)を抜いたら、抜いた穴から「グポポポ、ピュ〜〜」とか音を出し蛇口のように水が吹き出して青くなった。さっきまで体重預けてたのだが...。

3P目終了点に到着。かなり精神的に楽になる。無事大滝を抜けることが出来て良かった...。

ここからは滑滝、小滝を登り上がる。

4P目 山本リード

滑滝を登り小滝手間でロープいっぱいになる。快適快適。

5P目 木下リード

小滝を抜けてロープをいっぱいまで伸ばす。

ここでビレー解除してロープを引っ張ったまま氷の廻廊を100m位??歩くと雌鉾岳へ続く一般登山道に出る。

10:30一般登山道に合流しクライミング終了。

合流地点から雌鉾岳山頂までは近く、そのまま登山道から山頂に立つ事に!

アイスクライミングから自然な流れで山頂に立つ!これは非常に素晴らしいラインではないでしょうか⁈

雪を踏みしめ下山。

下山中に撮影した鉾岳大滝の全景

12:30頃 鹿川キャンプ場到着 下山完了

今回のクライミングは前回の試登、氷瀑崩壊に始まり、果たして取り付くかという葛藤も経ての完登。

そして先輩方のお話を伺うと「初登」と縁の無いものと思っていた記録にも巡り会うことが出来た。

クライミングのタイミングも果たして再び巡り会えるかわからない絶好のタイミング。

水量の少ない年の大寒波の底日、夜明け前から登り始めて氷が融解する前に登り切る。

前回の崩壊を踏まえて考えていた「登るための限られた条件」を完全に物した。

氷瀑と鉾岳のロケーションはとにかく素晴らしく、クライミングも爽快の一言!

まさに今回は会心の登攀と言って良いのではないだろうか!!

最後に、鉾岳大滝は非常に限られた条件でないと登れず、日が差し気温が緩むとすぐに崩壊することは、ここまで読んで頂いた方には解って頂けただろう。もしかすると二度と巡り会えない可能性の有るこの儚い氷瀑に、木下さんが「蒼い幻」と名前を付けた。鉾岳大滝は言うまでもなく鉾岳大滝でしかないのだが、もし再びこの滝に人が登れるほどの氷を付けたとき、是非その儚く美しい氷瀑を「蒼い幻」と呼んで欲しい。

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